県内での奨学金の債務整理は可能？注意点と対策

2023.08.20 / 最終更新日：2023.08.20

奨学金の返済に困った場合、債務整理は可能なのでしょうか。奨学金特有の問題点と、債務整理以外の救済制度について詳しく解説します。

奨学金債務整理の特殊性と注意点

奨学金の返済に困った場合、債務整理による解決は法的には可能ですが、一般的な借金とは異なる特殊な問題があります。最も重要な問題は、多くの奨学金に人的保証（連帯保証人・保証人）または機関保証が設定されていることです。

日本学生支援機構（JASSO）の奨学金を債務整理の対象とする場合、人的保証の場合は連帯保証人や保証人に一括返済の請求が行われます。連帯保証人は通常親や親族がなっているため、債務整理により家族に大きな迷惑をかけることになります。

機関保証の場合は、保証機関（日本国際教育支援協会）が代位弁済を行った後、保証機関から債務者に対して求償権の行使が行われます。代位弁済後は債務者と保証機関との関係となり、JASSOとの直接的な関係はなくなります。

奨学金は比較的低金利（年0.2〜3.0%程度）で設定されており、他の消費者金融やクレジットカードと比較すると金利負担は軽微です。そのため、高金利の借金がある場合は、まず奨学金以外の債務整理を優先することが合理的です。

奨学金の債務整理を検討する前に、JASSOが提供している救済制度の利用を検討することが重要です。減額返還制度や返還期限猶予制度などの制度により、債務整理を行わずに返済負担を軽減できる可能性があります。

任意整理の場合、奨学金を手続きの対象から除外することができます。この方法により、奨学金は従来通り返済を続けながら、他の高金利借金のみを整理することで、保証人への影響を回避できます。

個人再生や自己破産を選択する場合、奨学金も手続きに含まれるため、保証人への影響は避けられません。ただし、保証人自身も経済的に困窮している場合は、保証人も同時に債務整理を行うことを検討する必要があります。

奨学金の返済が困難になった場合、まず検討すべきはJASSOの救済制度です。減額返還制度では、月々の返済額を2分の1または3分の1に減額し、その分返済期間を延長することができます。年収300万円以下などの条件を満たす場合に利用でき、最長15年間の適用が可能です。

返還期限猶予制度は、一定期間返済を停止する制度です。失業、傷病、経済困難、在学、災害などの理由がある場合に利用でき、最長10年間の猶予が可能です。猶予期間中は返済義務がないため、経済状況の回復を待つことができます。

これらの制度の大きなメリットは、信用情報に悪影響を与えないことです。制度の利用は延滞として記録されないため、クレジットカードやローンの審査に影響しません。また、保証人に迷惑をかけることもありません。

一方、債務整理が有効なケースもあります。奨学金以外に多額の高金利借金がある場合、まず高金利借金を任意整理により整理し、奨学金については救済制度を利用するという併用アプローチが効果的です。

奨学金の元本が過大で、救済制度を利用しても返済が困難な場合は、債務整理を検討する必要があります。この場合、保証人への影響を十分に考慮し、事前に保証人との話し合いを行うことが重要です。

機関保証を利用している場合の債務整理では、代位弁済後の保証機関との交渉となります。保証機関は比較的柔軟な対応を取る場合もありますが、一般的には厳しい条件となることが多いです。

奨学金の債務整理により連帯保証人に請求が行われた場合、連帯保証人も債務整理を検討せざるを得ない状況になることがあります。この場合は、債務者と連帯保証人が同時に債務整理を行うことで、総合的な解決を図ることができます。

自己破産を選択した場合、奨学金債務も免責の対象となりますが、保証人の責任は免責されません。保証人が全額の返済義務を負うことになるため、保証人への影響を最小限に抑える方法を検討する必要があります。

個人再生の場合、奨学金も再生債権に含まれ、大幅な減額が可能です。ただし、保証人への請求は行われるため、保証人の経済状況も考慮して手続きを選択する必要があります。

奨学金の返済困難が一時的なものである場合は、債務整理よりもJASSOの救済制度を優先的に検討することをおすすめします。転職、病気、育児などによる一時的な収入減少であれば、猶予制度を利用して状況の改善を待つことが適切です。

将来の借入への影響も考慮する必要があります。奨学金の債務整理は信用情報に記録されるため、住宅ローンなどの将来の借入に影響します。一方、JASSO救済制度の利用は信用情報に影響しないため、将来への影響を最小限に抑えることができます。

連帯保証人や保証人との関係を維持することも重要な要素です。債務整理により家族関係が悪化することを避けるため、まずは救済制度の利用を検討し、それでも解決困難な場合に債務整理を選択することが望ましいでしょう。

奨学金の返済問題は、個人の経済問題にとどまらず、家族全体に影響を与える重要な問題です。専門家と十分に相談し、利用可能な救済制度を最大限活用した上で、必要に応じて債務整理を検討することが重要です。